料理が好きなら諦めるな。原因は仕事としての料理に慣れてないだけ。考え方を変えれば空気も変わるよ。
料理が好き。もっと上手くなりたい。
これを仕事にしたら楽しそうだし技術も身につきそう。
付いていけるか分からないけど、試しに飲食店で働いてみよう。
そう思って飲食業界に入って9年が経ちました。
9年間で幾つかの店舗を渡り歩き、アラサーになり結婚した今でも現役で飲食店のキッチンに立ってます。
今日は全くの素人からこの道に入った自分が、その環境に馴染んでいくために初めて働く店で気をつけていることを紹介します。
料理の技術や知識ではない部分のことです。
もちろん最初から全て意識出来た訳ではありません。
色々考えながら働くうちに分かってきた、その店に馴染むための自分の中の王道パターンといったところです。
初めてのキッチンに慣れずに悩んでいる人へ、少しでも参考になればと思います。
「次何しますか?」の大切さ
先輩忙しそうだし、今声かけたら迷惑かな・・・
分かります。
もちろんそんなこと気にせず自分からどんどんいけちゃう人はいます。
でも私のような人見知り、かつ当時のように未経験で入ってきた人間から見ると先輩達はとんでもない職人集団に見えます。
仕事を聞くタイミングすら分からず、とりあえず一番最初に教わった洗い物を黙々とやってみるも、
「洗い物しかやらないんだったら帰っていいよ」
と言われ時が止まる・・・(※昔の話です)
はい。折れますね。
もちろんこんなのね、「いや新人に仕事教えるのもお前らの仕事だろ!!」ってキレて当然の案件です。
むしろ一回そう言ってキレることが出来たら次の日から扱い変わると思います。
でも現実的ではありませんしリスクを伴います。
他にもっと雰囲気の良いお店もあるでしょうし、どうしても働きたい店とかでなければ早い段階で辞めるのも全然ありです。
でも悲しいことに、その店の本当のキッチン事情というのは実際に働いてみないと分からないことがほとんどです。
だから一回、試しに、もしかしたら冷たくあしらわれるかもしれないけど、ダメもとで、勇気を出して、言ってみましょう。
「手が空いたんですけど、次何かやることありますか?」
これです。
これを言って怒られたら、タイミングを間違えたかな、と思って他の先輩にも聞いてみます。
一言目さえ言えれば2回目以降はもう口が覚えてますので他の先輩にはもっとスムーズに聞けるはずです。
それで「別にないよ」とか「洗い物やっとけ」とか言うだけで誰も何も仕事をくれないような店なら今すぐ辞めましょう。
もしくはマジで他にやることのない、暇なのになぜかスタッフの募集をかけた不思議な店なのでどちらにせよ辞めましょう。
でもそんなのは極々稀な話で大抵の場合は何かしら仕事をくれます。
なぜなら先輩達の目から見て、ずっと洗い物なり最初に教わった仕事しかやり続けないのは、「仕事を覚えようという意欲がない」と捉えられてしまうことが多いからです。
それを次にやることを自分から聞きにいくことで「仕事を覚えたいと思っている」という意欲を伝えることが出来ます。
そこでようやく先輩と向きあうことが出来るのです。
何度も言いますが「普通先輩から教えに来るよね!?」と思う気持ちもよく分かります。
でも先輩も人間なんです。
「普通教えに来るよね?」というオーラを出すだけで自分から聞きに来ない新人には怪訝な気持ちを持ちますし、「こいつは本当にやる気があるのか」というのをさり気なく試しているのです。
そういう意味でこのワードを口にすることはメリットしかありません。
番外編「自分で考えろ」と言われたら
これはちょっと番外編で、働き始めて数日経過した場合に言われる可能性のある言葉です。
こうなってくるとちょっと状況を読んだ方が良いと思います。
なぜならこれは言い変えると「前も教えたよね?」ということだからです。
過去に同じ状況がなかったか、一度自分でも考えてみましょう。
もしくは「過去の応用でクリア出来ることだよ」という意味のパターンもあります。
単純に先輩の記憶違いということもありますが、この場合はまず状況を見て動いてみましょう。
もし違っても「違うよ」と言われるだけです。
「違うのか」ということが分かることがメリットと言えます。
次に活かしましょう。
とにかく先輩の動きを見る
20年前はこのスタイルだった
らしいです。
「とにかく見て覚えろ」という時代。
その時代を生き残ってきた猛者達が今の飲食店ではトップにいます。
とんでもない努力の末にやっとレシピを貰えても、作り方は教えて貰えずじっとシェフの動きを観察し、自分で作ってみて、シェフのOKが出なければお客様には出せない・・・
凄いなと思います。
そんな猛者からしてみれば「教えて貰えるだけで有難く思え」と言うのも当たり前の話です。
ここはリスペクトを持ちましょう。
学校の授業で言う予習・復習のようなもの
そんな経験をしてきたトップが、今の時代に合わせて1から10まで教えてくれることは稀です。
同時に、自分が教えられてきてない分、人に教えることが中々苦手な方も居ます。
「どう教えたら良いか分からない」と言うのが率直なところだと思います。
あと単純に、忙しい店であればあるほど時間をかけて教えてもらうという余裕がありません。
そんな中仕事を教えてもらうにあたって普段から先輩の動きを見ておくことは非常に重要です。
初めて教えてもらうことでも、少しでも「あ、先輩がいつもやってるやつだな」と思えるだけで1からではなく2くらいからスタート出来ます。
これは学校の授業で言う予習の様なもので、教わる時も頭に入ってきやすいですし、また一度教わった後も同じ作業を先輩はどうやってるのかな?と再び見ておくことで教わったことの復習にもなります。
メモは二度と教えて貰えない前提でとる
これはあくまで「そのくらいの気持ちで」ということなのですが、とにかく先輩は新人よりも多くの仕事を抱えていることがほとんどです。
そんな中で時間を作って仕事を教えてくれます。
もちろん一度教わっただけでは出来ることなんて中々ありませんし、分からなかったらもう一回聞きに行ったって良いんです。
でも一回教わったことを「えっと・・・どうやるんでしたっけ?」からスタートさせてしまったら先輩も「あの時の時間を返せ」となります。
この場合、そもそも初めて教えてもらう時に「次やる時になったらまた教えて貰えば良いや」という感覚だったり、メモすら取っていなかったという人もいます。
メモを取らなくても作れちゃうのは本当に経験のある人だけです。
そして未経験なのにメモを取らないタイプの人が2回目以降にやった時、メモを取った人よりも仕事が出来ていたというケースを見たことがありません。
未経験からスタートしている人は本気でメモを取ることをお勧めします。
その場合重要なのはメモの取り方です。
メモの精度を上げよう
例えば、ランチで使うサラダの準備を教えてもらうとしましょう。
「葉物を水にさらして水を切り、一口大にちぎる」とメモに書いたとします。
その時はそれで大丈夫かもしれません。
実際に先輩が目の前でやってくれたし、細かいところは映像で記憶した。
そう思ったとしても、その日一日他にも色々な作業をして家に帰り、ご飯を食べたりテレビを観たりした後睡眠をとり、翌朝起きてまた出勤した頃には記憶したはずの映像は半分以下になっている可能性が高いです。
その状況で昨日のメモを開き「葉物を水にさらして水を切り、一口大にちぎる」を確認したとしても「葉物って・・・どこから取ってくれば良いんだ?」「葉物って、サニーレタスと普通のレタスと、あともう一つ何か使ってたな・・・」「水にさらすって・・・どのくらい?」など、細かい疑問が次々に出てきます。
これでは結局「えっと・・・どうやるんでしたっけ?」と言わざるを得なくなります。
それを回避するためにもメモの精度というのは重要です。
いくつかポイントがあります。
- まず何からするのか書く
- スタートのきっかけをメモっておくことで記憶の再生ボタンになる
- 例)その日届いた野菜入れの中からサニー1個、レタス1個、水菜1束を持ってくる
- 使った道具も正確に書く
- 道具の選択は作業効率に影響するので意外と大事。先輩が何の道具を使っていたかはメモっておいて損はない。
- 例)一番大きいボウルにサニーとレタス、中くらいのボウルに水菜を入れて水にさらす
- 次の工程に移るタイミングを書く
- どのタイミングで次の工程に進んで良いか分からず先に進めなかったり、タイミングを間違えると失敗の可能性も
- 例)20分ほど水にさらし、葉がシャキッとしてきたらサラダスピナーを使って水気を切る
- 最後にしまうところまで書く
- 全部終わったのに、どこにどうやってしまったら良いか分からなくて結局先輩を探す羽目になる(※最初のうちは先輩に仕上がりをチェックしてもらった方が良いので注意)
- 例)最後はサラダ用のボックスに入れて前菜用の冷蔵庫にしまう
ここまで書いておけば、仮に完全に記憶に残ってなかったとしてもメモを見ながら進めれば大きな間違いは少ないですし、やりながら思い出すことも出来ます。
素早くメモるには
ここまでで気になった方もいると思いますが、「短時間でこんなに書けるか??」というところが問題です。
こちらがメモを取るのを待ちながら進んでくれる先輩なら良いですが、そうじゃない先輩もいます。
ここで大切なのは、あくまで「メモ」であり「ノート」ではないということです。
自分が思い出せれば良いので、一般的な物や食材の名前などはメモる時は正しい名称でなくても良いと思います。例えば私は「オリーブオイル」と書くのが長かったので「オリオリ」と書いてました。(略にもなってないし他の人が見たら意味不明ですが一瞬で書ける)状態を表す言葉も「真ん中が少しだけ沸いてきたら」という状態のことを「ちょい沸き」と名付けたり。
さらっと書けるように使用頻度が高いものは自分だけが分かるワードに変換して決めておきます。
あとは字は読めれば良い程度。メモ帳の罫線も無視します。極力手元に視線を落とさず先輩の作業を見ます。
但しレシピの分量など数字に関しては間違えると大変なのでここは丁寧に書きます。もしくは可能であればレシピの部分だけ画像を撮らせてもらったりします。
物の場所は正確に覚える
分からないものはまとめておいて一気に聞こう
大体最初に教わるのが洗い物のポジションなのですが、洗った後にそれぞれどこにしまえば良いか分からず、一つ一つ先輩に聞くのも気が引ける・・・
そう思って何となくここかな?と思った場所にしまったけど実は間違っていて、後日先輩が使う時に「あれないぞ!」ということになり厨房総出で探すこともあります。
それで見つかれば良いですが、不思議とそのまま物がなくなってしまうことすらあります。
そうなる前に物の正確な位置をしっかり確認するようにしましょう。
何回も先輩に聞くことが気が引けるようなら、分からないものでまとめておいて先輩が通りかかったタイミングなどで一気に聞きましょう。
作業の優先順位
最初は分からなくて当たり前
これは家でやる料理と大きく違う点です。
家でやるなら自分が好きな時に好きなものを作ることが出来ます。
しかし仕事としてやる料理はお客様の為の料理ですので、お客様からオーダーの入ったものを適正な提供時間の中で仕上げていかなければなりません。
その為には当たり前ですが作業の優先順位というものが発生します。
しかしその優先順位を決めるには厨房全体の状況をある程度分かっていなければなりません。
これは入ってきたばかりの新人に判断することは中々難しいです。
極端な例ですが、つい自分が指示された作業に没頭してしまい、途中で分からないことがあったからと言って今現在めちゃくちゃオーダーの肉を煽ってる最中の先輩に聞きに行ってはいけません。
どう考えてもこの先輩の煽ってる肉料理の完成がこの厨房内での最優先事項です。
このような失敗をしてしまってもそこから学んで分かっていけば大丈夫です。
でも一応、ざっくりと定番の優先順位を紹介しておきます。
優先順位は大体こんな感じ
- オーダーの入ったメニューの調理
- その調理において必要なのに足りてないものがあった場合その用意
- 今日の〇〇時までに終わらせなければいけないものの仕込み
- 今日中に終わらせなければいけないものの仕込み
- 明日以降に使うであろうもの、冷凍ストックなどの仕込み
自分は大まかにこんな感じで考えることが多いです。
優先順位が低いからゆっくりやって良いという訳ではないですが、何か任されると緊張して周りが見えなくなってしまうというタイプの人は、自分が今やっている作業がどのくらいの順位のものなのかうっすら意識しておくと気持ちに余裕が生まれるかもしれません。
単純作業はまとめてやる
仕事が遅いと言われたら
家でやる料理と仕事でやる料理とのもう一つの違いはそのスピード感です。
飲食店のスピード感は日常生活からは到底考えられないられないような動きをしなければついて行けません。
先輩達の動きの速さに圧倒され、自分もなんとかついて行こうとするも「遅い!!」とゲキを飛ばされたりします。
これは単純に動きの速さだけで解決出来る問題ではありません。
詳しくはまたお話したいと思いますが、まず簡単に実行出来るコツとして挙げられるのが「単純作業はまとめてやる」ということです。
実際の例で考えてみよう
例えば一つのお皿にグリーンサラダとキャロットラペとチキンソテーを盛り付けるメニューがあったとしましょう。
そしてそれを3人前盛り付けるとした場合、どういった手順で仕上げていきますか?
一皿ずつサラダ→ラペ→チキンと盛ってそれを3回繰り返すよりも、
サラダならサラダを3皿分一気に盛り、続けてラペを3皿分一気に盛り、チキンを3皿分一気に盛って仕上げた方が完成までに要する時間は少なくて済みます。
これは単純な作業ごとにまとめ、それを繰り返すリズムを作ることで動作が整理され考える時間を短縮出来るからだと考えます。
また、一つの作業における繰り返しの数が多いほどリズムが生まれやすいです。
例えば海老の下処理を1Kgやるとして、まず一気に全ての殻を剥き、それから一気に全ての背わたを取っていった方が断然早いです。
もしも1尾ずつ殻を剥いて背わたを取り、それを1Kg分繰り返しているような新人がいたら先輩に二度見されてもおかしくありません。
これは何にでも応用できる考え方ですし基本的なことなので今まであまり意識していなかった人は是非試してみてください。
最後に・・・
世の中で言われているように、確かに飲食業はブラック体質が染み付いてしまっているところがあります。
またそこに長くいる人ほど結構感覚がマヒしてしまっている場合が多いので、初めてこの世界に入ってきた人の中には早々に心が折れそうになっている人も沢山いると思います。
でもせっかく料理が好きでこの世界に飛び込んで、考え方が分からないだけでその場に馴染めず、ちゃんと料理が出来るポジションにつく前に諦めてしまう人を見ていて、もったいない気持ちとちゃんと伝えてあげられない自分の力不足を感じていました。
今回の記事は相当丁寧に書いてありますが、普段の現場ではここまで丁寧に伝えられないのが実際のところです。
またあくまで自分の経験上思ったことなので当てはまらない方もいるとは思いますが、飲食店未経験で入ったけど自分には向いてない気がする、なんだか周りにハマってないなと感じている人へ、少しでもヒントになったら本当に嬉しいです。
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